アニソン界に人気アーティストが押し寄せたきっかけは小室哲哉★

日本経済新聞‎ 小室哲哉 伝説のアニソン名曲はこうして生まれた

アニメ専門歌手やアイドル歌手による歌が主流だったアニソン市場に、80年代のある時期から、人気アーティストやロックバンドが大挙して押し寄せるようになった。そのきっかけを作ったのがこの人、小室哲哉だ。

 TM NETWORKによる『吸血鬼ハンター“D”』(85年OVA)に始まり、『シティーハンター』(87年)や『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(88年)。篠原涼子がダブルミリオンを記録した『ストリートファイターII MOVIE』(94年)。安室奈美恵が歌った『劇場版ポケットモンスター 幻のポケモン ルギア爆誕』(99年)。globeによる『サイボーグ009』(01年)や『ブラック・ジャック』(04年)。本当に数多くのアニメ音楽を世に送り出した。

 彼の曲に影響を受けてアニソン制作に関わるようになった若手世代も多く、今も最新アニメに曲を起用されるなど、小室サウンドとアニメは親和性が高い。アニメに寄り添い30年を迎えた彼が、アニソン界の変化と、伝説的アニソンの誕生秘話について語った。

■『Get Wild』の誕生

 もともと僕らTM NETWORKは、EPIC・ソニー(現・エピックレコードジャパン)という、当時の新しいレコード会社からデビューしました。EPICは、長い歴史がある本体CBS・ソニーや他のレコード会社とは違うアプローチで、何かできないかということを常に考えていたんですよね。当時の20代の宣伝の人間たちが、新しいヒットの形式を作りたいと奔走するなかで、サンライズさんのように、やはり新しいことをやりたい方たちと出会えて、『シティーハンター』や、後に『ガンダム』のエンディングテーマなども作ることになりました。

 『シティーハンター』は、サンライズの制作の方がエンディングに強いこだわりを持っていたらしくて、劇画や実写のようにテロップが長く流れるエンディングを作ってみたいと相談されました。『Get Wild』のオリジナルアレンジは、出だしが小さい鍵盤音で始まるんですが、そこが何秒間か本編にかぶってほしい、それでドン! と音楽が始まるところでパッとエンディングに入りたいと。一緒にミーティングをして、そこで考えながら作っていった曲でした。エンディングも含めて『シティーハンター』なんだというこだわりをみんなが持っていましたね。

 翌年の『シティーハンター2』の『STILL LOVE HER(失われた風景)』も同じ作り方でした。今でもよく、「歌のタイトルは忘れちゃったけど、『シティーハンター』のエンディングはすごく覚えてるんですよね」って言われます。僕としては、アニメが浮かんでから曲が浮かんでも、曲が浮かんでからアニメが浮かんでも、どちらでも良かったんですね。


 当時、これほどアニメに寄り添って音楽を制作するアーティストは珍しかった。そして、彼ら自身もこの『Get Wild』でブレイクを果たした。

■予定外だった『恋しさと~』

 その後、劇場版『ストリートファイターII MOVIE』のサントラを担当しました。やはり制作の方が、音楽にこだわりのある方で、trfの『寒い夜だから…』のように、頭からゴーンと入る曲の感じがこのアニメには欲しいと。実は、既に篠原涼子さんの歌で1曲作り終えた後で、もう納期も過ぎていましたが、どうしてもああいう曲が欲しいから、もう1回作れないかと電話があって。それでできたのが『恋しさとせつなさと心強さと』なんです。最初に提示した曲はカップリング曲『GooD‐Luck』で、本当はその曲のみの予定でした。

 当時のアニメ界は、アニメと音楽でインパクトを与えたいという気持ちのある方が、どんどん増えてきていた時期だったんですね。あの曲は、映画館へ行った小学生の男の子たちがエンディングで聴いて、お父さんお母さんに「あの曲のCD買って」とねだって売れていったんです。あのヒットは、確実に『ストII』のおかげなんですよ。映画館に見に行った人の曲の記憶が強くて、それでだんだんじわじわ、夏休み中に売れていったんです。


 アニメに入り込んで作ったのが『Get Wild』や『恋しさとせつなさと~』なら、globeの音楽性を自然に出して取り組んだのが『サイボーグ009』だ。

 僕にとっては、アニメ側に寄らないで、一番何も考えずに自然にできたのが、『サイボーグ009』でした。石ノ森章太郎さんが考えたあの時代のあのテーマ、人は1人では生きていけないとか、友情や助け合いなどが、globeに合っていたと思うんですよね。シングルとしてリリースした『genesis of next』をはじめ、トータルでいろいろな音楽をやらせてもらいました。

■強まる“非日常”への欲求

 今やアニソン界も様変わりした。30年寄り添った彼の目には、物語だけでなく音にも“ぶっとんだ非日常”を求める視聴者の姿が映る。

 昨年、ノイタミナのアニメ(フジ系深夜アニメ枠で2016年放送の『パンチライン』)で音楽を手がけて、時代は変わったんだなとつくづく思いましたね。視聴者がアニメに非日常を求める気持ちは、『鉄腕アトム』や『鉄人28号』の昔からありましたが、今はその欲求がさらに強くなっている気がします。アニメの中ではせめて非日常体験がしたいと。今の子たちは処理能力が速いので、非日常にすぐ入り込めちゃうし、瞬間で日常に戻れますから。

 音や声もぶっとんだ設定になっていますね。きれいなメロディーを求めるのではなく、聴いたことのない音が飛んでくるとか、音楽ではあるけどビートやノイズみたいなものとか。バラードでもビートを刻める子たちですから。それを垣間見たのが『パンチライン』でした。監督からは、いつものアニメの感じと違うサウンドで面白かったです、と言われました。僕はアニメ側にすごく寄ったつもりだったんですけど(笑)。

 実は『ケロロ軍曹』(06年)のときにも、すごくアニメに寄り添ったつもりでしたが、監督に同じように言われました(笑)。その時も感じましたね。今の子たちは非日常のぶっとんだ世界がもっと欲しいんだな、どうせ20分ちょっとですぐ日常に戻るんだから、せめてその時間だけはとんでもない非日常感を求めているんだなと。

 僕が最初にアニメと組んだのは『吸血鬼ハンター“D”』(85年OVA)ですが、そのときはメロディーが一番大事だったんですよ。天野喜孝さんの絵に合わせた音楽ということで、あの美しい世界観をいかに大切にするか、というところからのオファーだったんです。それから30年で、日本のアニメカルチャーは大きく変わりました。それを引き戻すように、ディズニーはあえてミュージカルだったり、逆の方に世界を作ろうとしているのかなと思ったりします。日本のアニメカルチャーとハリウッドカルチャーは、お互いに無いものねだりの面もあるし、影響を与え合っていますね。




2016/09/05 | 18:05
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